*時差*
りょうと私は、初の海外旅行に胸躍らせながら関空へと向かいました。私たちの乗る飛行機
は、ちょうどキャンペーン中でムーミンがドーンと描かれているムーミン号でした。フィン
ランドは
『ムーミン』を描いたトーヴェ・ヤンソンの生まれた国でもあります。ところで 私は、日程表に
11:00大阪発、15:25ヘルシンキ着と書いてあったので、「へー、ヘルシ ンキまで4時間半で着
くのかー。早いなあ。」と本気で思っていて、時差のことなんて全 く無視。出発から5時間たっ
てもいっこうに到着の気配がない。私はそこでやっと時差の 存在に気づき、実際には7時間ぐら
いかかることを知りました。
私たちは(と言うか“りょうは”)しょっぱなからついていなかった。まずは、手始めに
関空で、りょうのスーツケースが壊れる。ちなみにこのスーツケースは借り物でした。応
急処置をしてなんとか飛行機につめてもらいました。次のハプニングはというと、ヘルシ
ンキの空港に着いた私たちは、スーツケースが運ばれてくるのを待っていた。ところがい
くら待ってもりょうのスーツケースだけ現れない。添乗員さんも「ひょっとしたら、間違
ってエジプトの方へ飛んでいるかも・・・」などという始末。仕方がないので紛失届けを
書いていたら、幸いなことにひょいとスーツケースが出てきてくれて一安心。今度はホテ
ルに着いたとたん自由時間が与えられた。つまり、夕食は自力で食べなくてはならない、
ということ。初めて来た異国の地で私たちは途方に暮れた。なぜなら、私たちはフィンラ
ンド語はもとより、英語すら話せない。ツアーだし、添乗員いるし、英語話せなくても何
とかなるさ、という気持ちでいた私たちが甘かった。いざとなると“道の聞き方”ってど
う言えばいいんだっけ?“日本から来た”ってどう言うんだっけ?と簡単な会話すらでて
こない。こんなことなら、英語やってくればよかったと後悔の嵐でした。
フィンランドには、日本と違って町全体にのんびりとした空気と時間が流れていました。
日本のようにせかせか歩いている人はいません。ヘルシンキという一番大きな都市でさえ
、そうなのです。デパートのレジで買い物客が列をつくっていても、店員さんは、焦らず
丁寧にラッピングします。そしてお客さん一人ひとりに笑顔で接します。こんな光景を見
たとき、自分がどんなに日々何かに追われて忙しくしているか、そんな中で自分は彼らの
ようなゆったりとした心をどこかに追いやってしまっていることに気づかされました。私
もこんなのんびりとした国で、暮らしたいなあと思いました。