,お気に入りの本 紹介文

からくりからくさ

この作品は新潮文庫から出ています。
この他に「裏庭」「西の魔女が死んだ」も新潮文庫から出ています。
「からくりからくさ」という作品は、ものすごく大きな事件が起こる話ではありません
大学生3人と染色家の卵と市松人形のりかさんが、布を織ったり、糸を染めたり、節約のために
庭の草を食べたり、しながら普通に共同生活を始めることがものがたりの始まりです。
そのうちに、現在の人間関係と、過去の人間関係が複雑に入り組んできて、最終的には驚きの結果になります。
ちょっと、長めの作品ですが、解けていく謎が気になって一気に読んでしまいました。
時間をかけて読み返したときには、いろいろな感情があふれていることに驚かされました。
私は、3作品に共通している雰囲気として「厳しいやさしさ」があるように思います。
主人公は守られていると、感じているけれど、きちんと自分の力が足りないことも知っていて
何とかしようと頑張っている。そんな風に感じられます。

 

   

スキップ  ターン  リプレイ

ここでは、時間をテーマにした作品を紹介します
。 これらの作品も全て新潮文庫から出ています。
よく、夏の100冊とかに選ばれています。
スキップ、ターンは北村薫さんの、作品で、リプレイはK.グリムウッドさんの作品です。
それぞれの時間の流れについて説明します。

スキップは17歳だった主人公が昼寝から目覚めると25年後の世界になっていました。
ターンは同じ1日をずっと繰り返している状態です。
リターンは43歳から18歳に逆戻りし何度も人生をやり直す
。 この3作品は時間をテーマにしていること、時間という大きな力によって
それぞれの主人公が「失って」しまうことが共通しています。



  スキップ:主人公の真理子は、自分が過ごしてきた25年間をすべて、失ってしまいます。
周りの反応としては、記憶喪失ですが本人は、17歳からの未来はすべて奪われたようなものです。
さらに、自分と同い年の娘までいます。さらに、自分は高校の教師をしており、新たに担任を持つところだったのです。
これだけでも、逃げ出したくなりそうなのに、真理子さんは向き合うことにします。
そこからは、25年前の高校生の感覚と、現代の高校生の感覚のギャップや、町の雰囲気の違い、
年月を経て、徐々に感じてきた人たちと違って、全てが新鮮で、未来の世界そのもののように、
描写されています。

結局、この話の最後では、思い出せないまま、
こちらの世界に残ることを決意します。
それは、諦めではなくて、とても前向きで、気持ちよくなるほどです
。 普通、戻れないとなるとアンハッピーエンドになりがちですが、
現実を受け入れた真理子さんは幸せになれそうな気がしました。



ターン:主人公の 真希さんは交通事故を起こして気を失ってしまいます。その後、目覚めると、
自宅の縁側に寝そべっていました。事故は夢だったのかと思って、過ごしていると、
自分以外に動物の気配がないことに気づきます。
何かがおかしいと、思っているうちにpm3:15(事故を起こした時間)になると場面が変わってしまいました。
また、縁側に戻ってきていたのです。
つまり、真希さんは同じ一日を何回も、繰り返すことになったのです。
この世界では自分しかいません。話し相手は小さなときから、頭の中で話し変えてくる「彼」だけです。
希望も,やる気も失ってしまい、抜け殻のようにすごすようになります。


そんな、先に広がる未来と、人のいる世界を奪われた真希さんに、150日後、突然、電話がかかってきます。
そうして彼女はいろいろな事実と、自分のいる状況を知っていきます。

私は、前者のスキップが家族の関係を描いたものであるのに対して、
このターンは最高に運命的な恋愛関係を描いたものではないかと思いました。


電話が切れてしまい、彼女との繋がりがなくなったあとも、彼女のお見舞いに行き、
毎日語りかけていた泉さん(電話してきた相手でいつも聞こえている声の人)と、
彼女が会話をしながら次第に目を覚ましていく一番最後のシーンが好きです。


リプレイ:主人公 ジェフは43歳のある日、心臓発作で倒れます。
気が付くと、18歳の自分に戻っています。ちょうど、夫婦中もさめ、もう一度人生をやり直したいと、
考えていたジェフはこの現象を肯定的に受け入れて、人生をやり直します。
基本的に、自分の知っている歴史と変わっていないため、ジェフはまるで未来が読めるような状態です。
その情報を駆使して、大金持ちになります。しかし、43歳のある日、また彼は18歳の自分に戻ってしまいます。
この、リプレイを何度も繰り返すうちに、彼は、自分が作りかえた歴史を誰も知らないことに失望し始めます。
どんなにがんばっても、43歳のあの日がくれば一からやり直しです。
そんな、失意の彼に自分もリプレイしており、ジェフの成功を知っている、という女性が現れます。
パートナーを手に入れ、永遠の孤独から逃れた気持ちになっていた彼らに、
自分が消滅するのではないかという恐怖感がやってきます。

自分の人生を何度もやり直せるなら、いいじゃないか。と最初は思いました。
スキップの真理子さんとは正反対のような時間の流れです。
ジェフはこれから何が起こるか知っているため、あまり努力していたようには見えません。
何度も繰り返される、時間の中で孤独感を覚えるところには同情しましたが、
好きにはなれませんでした。
話としてはとても面白いのですが・・・。

六番目の小夜子

恩田陸さん

この作品は、恩田陸さんのものです。
これも新潮文庫です 六番目の小夜子ってよく聞くけど、面白いのかな?っと思って 手を出し、
はまってしまったようです。ただ、たくさん作品を出されているので
読んでいない作品ばかりが増えます。
恩田陸さんといえば、やはり6番目の小夜子でしょう。
最初、某リングの井戸から出てくる人みたいな、怨霊みたいなものが小夜子かと思っていたんですが
違いました。
普通の、いえ、才色兼備の転校生でした。
伝統ある高校の中で、いつのまにか伝えられ始めた「文化祭の小夜子の劇」。
いつ途切れてもおかしくないはずなのに、誰かが修正して続けさせようとしている。
この、謎に高校生が挑んで解いていくという話ですが、すごく緻密で面白い。
文章のテンポというか、言葉の使い方がうまいなー。と思いました。

実際は、目立たない先生が一枚噛んでいるようでしたが、それだけで終わらず、
本当の黒幕が誰かわからない。というラストもうまい!!という感じでした。
この小夜子の番外編と,が「図書室の海」に入っているそうです。
あと、映画化された「木曜組曲」がとても気になります。
映画と原作はラストが違うそうなので、ぜひ2つともみて、比べたいところです。

アニマルロジック

 山田詠美さん

この話も新潮文庫から出ています。
主人公 ヤスミンの飄々としつつも、みんなが目をそらしていることに
グサッと突き刺さる一言を言い放つ。その格好よさにやられました。


この作家さんの主人公はみんな格好いいと思います。
そして、きめ言葉が良い。
突拍子もなく聞こえてしまいそうなことを、アッサリ言ってのけます。
辛いことでもあるし、とびっきりの皮肉のこともあるし、
なかなかいえない自分の内面を相手にぶつける言葉のときもあります。
とにかく、その台詞の力に惹かれている気がします。


そして、この話の中ではヤスミンの体内に住む生物の、独特の視点が
話を2倍は面白くしていると思います。

 落花流水 

山本文緒さん

この本は集英社文庫から出ています。
この本は短編集で、ひとつの作品につき、10年ずつなん月が経っています。
1967年から2027年まで、主人公はそれぞれ代わります。
中心となっているは手毬という女性です。
彼女を主役に、時に取り巻く人々の心情で描きながら、
思いどうりに生きることの難しさや、そのために払われた犠牲、
愛情とはどんなものなのか、といったことがかかれているような気がします。
家族の絆や、運命の皮肉さ、実際には起こりそうにないことだけど、
「どうせ、フィクションだし」とは割り切れない気持ちになりました。

夏と花火と私の死体

乙一さん 

この本は集英社文庫から出ています。
すごくおどろおどろしそうですが、淡々と、細密に描かれていて、ドキドキしながら読める 作品です。
これを読むきっかけになったのは、北村薫さんのアンソロジーにはいっていたからというのと、
アマゾンのお勧めの本の中に入っていたこと、
そして、偶然書店の文庫コーナーに直筆紹介文があったことです。
書いてあったことは、覚えていないのですが、「なんか、癖のありそうな人だな」と思いました。
読み終わっての感想は、すごい!!この一言に尽きる思いでした。
なんと言っても、この作品は殺されてしまった死体の1人称で書かれています。
主人公は、いきなり木の上から突き落とされてしまった皐月ちゃんです。
その、私の死体を突き落としてしまった、弥生ちゃんとお兄ちゃんの2人が隠そうとする話です。
頭のいいお兄ちゃんとは言っても、所詮、小学生。
何度も、ばれそうになりながら、夏祭りの花火大会まで隠しとうします。
そこで・・・・・・。内容なんですが、もう最後まで緊張して一気に読んでしまいました。


この他にも、いろいろ作品があるようなのですが、
なかなか、文庫本にお目にかかれないのでまとめてネットで買うべきか、検討中です。
そうそう、GOTHという作品が何かのランキングで2位になっていました。
これを期にたくさん文庫を置いて欲しいです。