最終更新1997年6月28日

エンゼルプランとゴールドプラン

長谷川仁志

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には人口が現在の2割減となる。人口割合では、既に、老年人口が年少人口を上回っているが、年少人口は現在の16.0%から減少を続けて2030年には12.7%となる。一方、老年人口は現在の14.6%から増加し続けて2050年には32.3%となり、現在、生産年齢人口5人で1人養っている老人を、2050年には2人で1人以上養わなければならなくなる。 超高齢社会に備え、国は、「新ゴールドプラン」を策定しているが、プランの内容は、在宅サービス、施設サービスなど高齢者介護対策が主体で、1999年度までの5年間の総事業費は、9兆円を上回る規模とされている。 高齢者介護は、既に緊急の課題で、介護保険が導入されてもなお課題解決の道は遠いと予想され、現在の施策で決して十分とはいえない。

 しかし、少子・高齢化の影響は、高齢者介護の問題だけでなく、社会・経済全般、社会保障・福祉、子どもの社会性の低下などきわめて広範で、社会の活性をも低下させる。

 この問題の解決の基本は、人口の質と量の確保以外にはなく、国は、少子化対策として、「子育て支援社会の構築」を目指して、「エンゼルプラン」を策定し、このプランの具体化の一環として「緊急保育対策等5か年事業」が95年度から実施されている。

 その内容は、低年齢児・延長・一時的保育、保育所の整備・充実などで、96年度は2187億円の予算が計上された。これは、新ゴールドプラン1年間の予算の12%に過ぎず、社会全体で子育てを支援していく体制を推進しているとは到底いえない。

 子育てコスト、教育費、受験戦争、子育てと仕事の両立、労働時間などなど、長期的視野に立って解決しなければならない課題は多く、重点的な予算配分が急がれる。

(おわり)