安森征治教授第31回日展特選受賞


第31回日展特選受賞にあたって (1999年11月) 安森征治

第31回日展(1999)特選「一隅」

 1972年第5回日展初入選以来19回目の入選作がはからずも特選に選ばれ,感無量です。
 日展は明治40年第1回文部省美術展覧会(文展)以来,帝国美術院展覧会(帝展),新日展,改組日展等幾多の改革改称を経て,現在に至っています。
 第1科日本画,第2科洋画,第3科彫刻,第4科工芸,第5科書の5科からなる,わが国最大の総合美術展覧会です。表現様式は,具象を重んじる中でより斬新で力強い気風の作品を要求されます。
 また日展は傘下にある多数の美術団体の総合展でもあり,それぞれの団体独自の理念のせめぎ合いでもあると言えます。それだけに,特選に選ばれるということは,団体の代表でもあるので受賞以後の作品に注目が集まります。そのことを考えると,自分の事だけを考えて喜んでばかりもいられません。受賞以後消えていった作家はたくさんいます。
 喜びは喜びとして,今後の自分の制作について真剣に考えている昨今です。

 尚,この作品は,インド北部を旅行中,ある小さな町の通りの一隅で壺を売る老人に出会い,その威厳のある表情,悠然たる所作に心惹かれて題材にしたものです。精神性の高い作品にと願って3ヵ月を要して完成させたものです。
 大きさは縦162cm×横134cmの油絵です。

 現在この作品は東京都美術館での本展を終了し,全国9会場を巡る巡回展に廻っています。広島展は隔年開催であり,当作品は広島では観ていただけないのが残念です。


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